不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
「前々から、“ヤツシマには女癖の悪い奴がいる”って噂を聞いてたし、もしかしたらと思ってね」

「あ……だから私がヤツシマって言ったのを聞いて引き留めたのね」


昨日、急に真剣に止められたことを思い出しながら言うと、耀は「そう」と頷いた。


「『綾瀬なつみは僕の恋人になったので、手は出さないでいただきたい』って言ったら、即謝ってくれたよ。Akaruとの契約切られたら向こうは多少なりともダメージを受けるだろうし、長沼さんも自分のせいでそんなことになったら困るに違いないからね」

「なるほど……あの人が謝ってきたのも、耀が余裕でいられたのも、今朝早くに出たのもそういうことか」


いろいろな謎が解けて、肩の力が抜けていく。

今朝の置き手紙に“Akaruが寝かせてくれない”とか書いてあったけど、あれは“Akaruとしてやらなきゃいけないことがある”という意味だったのね。まぎらわしい書き方をしないでほしい……。

ただ、ひとつだけ心配が残る。私は少し眉根を寄せ、ファイルを棚に戻す彼を見上げる。
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