不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
「じゃあ、Akaruの正体がバレちゃったんでしょう? そんなことしてよかったの?」

「大丈夫。知名度が上がるまでは隠そうとしてたけど、今はもう自然に任せる感じだから。それに、君を守るためなら安いものだよ」


まったく問題なさそうにする耀に安堵しつつも、最後の言葉でトクンと胸が鳴った。

私を見つめる彼の瞳に、情熱の色がみるみる濃くなっていく。


「なつみが思ってるより、僕は君が大切なんだ。今の僕があるのはなつみのおかげだから」

「……私?」


意外な発言に、ぽかんとしてしまう。耀に助けられたことは何度もあったけれど、私がなにかしてあげたことがあっただろうか。

考えても、彼のためになにもできていない自分に嫌気が差すばかり。そんな私の耳に、穏やかな声が届く。


「小学生のとき、僕は外に出られないから、本を読むか絵を描くことくらいしかできなかった。その絵を見た君が、『すごく上手』って言ってくれたこと、覚えてる?」

「あぁ、うん。覚えてる」


ついさっき思い出していた遠い日のことを、耀も覚えていたらしい。

「あの毒舌なっちゃんが褒めた!って、結構衝撃だったんだよね」と言って、懐かしそうに笑うものだから、私は口の端を引きつらせた。
< 119 / 124 >

この作品をシェア

pagetop