不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
『嬉しい』って、どうして?

私は彼にも散々酷いことを言った。だから絶対嫌われていると思っていたし、会いたくもなかったのに……。もしや、この男も仮面を被っているとか?

ぎこちない笑みを貼りつけながら疑心を抱いていると、静観していた久礼社長が腕を組み、真面目な顔で口を開く。


「運命の再会、しかも相手はこんなべっぴんさんって、逆転ホームランだな加々美」

「意味がわかりませんけど」


苦笑を漏らす耀に、私も同感。すると、久礼社長は耀の頭にポンと手を乗せ、私に向き直って表情を変えずに話しかけてくる。


「こいつね、超絶モテるくせに女運はイマイチな男なんですよ。だから仲良くしてやってください、綾瀬さん。いや、なっちゃん」

「なぜ呼び直すんですか」


耀が即座にツッコみ、漫才さながらのやり取りに軽く吹き出してしまった。あまりいい女性に巡り会えていないことも暴露されているし。

失笑していると、耀は頭に乗せられた手をどけ、私たちに謝る。


「すみません、久礼が余計なことを。見た目に反して中身が変わってるというか、オヤジというか」

「上司をディスるな」


今度は久礼社長がツッコむ番で、再びクスクスと笑いつつ、このふたりは息ぴったりだなと妙に感心する。
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