不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
苦い思い出が次々と蘇ってきて、再びそれを頭の奥に無理やりしまい込む。余計なことに気を取られていないで、早く休憩しよう。
気持ちを切り替え、階段に差しかかるところで、背後から「綾瀬さん!」と呼ばれた。振り向けば、人事部の部長がこちらに近づいてくる。
「ちょうどよかった、頼みたいことがあって」
くりっとした目と丸々とした体型は、いつ見てもダルマみたいだ。失敗してもくじけない性格まで、転んでも起き上がるそれと同じ。
悪い人ではないけれど、この部長の頼みってだいたいロクなものじゃないのよね……と、あまりよくない予感を抱くも、にこりと微笑む。
「どうされました?」
「社長の承認が欲しい契約書があるんだけど、今日中にもらえるかな?」
「今日中、ですか」
書類を差し出されながらの急な用件に、私の片眉が無意識にピクリと上がった。
突発的な案件でこういうことはたまにあるし、どうしてもということならもちろん私も最善を尽くす。しかし、『できれば』ということは必ず今日欲しいわけでもなさそうだ。
こちらはスケジュールが詰まっているし、社長が別の案件にかかりきりになることもあるから、今日中というのはなるべく避けていただきたい。
気持ちを切り替え、階段に差しかかるところで、背後から「綾瀬さん!」と呼ばれた。振り向けば、人事部の部長がこちらに近づいてくる。
「ちょうどよかった、頼みたいことがあって」
くりっとした目と丸々とした体型は、いつ見てもダルマみたいだ。失敗してもくじけない性格まで、転んでも起き上がるそれと同じ。
悪い人ではないけれど、この部長の頼みってだいたいロクなものじゃないのよね……と、あまりよくない予感を抱くも、にこりと微笑む。
「どうされました?」
「社長の承認が欲しい契約書があるんだけど、今日中にもらえるかな?」
「今日中、ですか」
書類を差し出されながらの急な用件に、私の片眉が無意識にピクリと上がった。
突発的な案件でこういうことはたまにあるし、どうしてもということならもちろん私も最善を尽くす。しかし、『できれば』ということは必ず今日欲しいわけでもなさそうだ。
こちらはスケジュールが詰まっているし、社長が別の案件にかかりきりになることもあるから、今日中というのはなるべく避けていただきたい。