不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
しかも、今はもう午後に突入しているし。もうちょっと時間を考えてくださいよ、その五分刈りの頭で。

……と、腕時計を確認して心の中で文句をつけつつ、少し困った笑顔を浮かべて不本意ながら下手に出る。


「ご多用中かとは思うのですが、三十分以内にその契約書を準備していただければ間に合うかもしれません」

「三十分か。さすがは社長の右腕、シビアだなぁ」


腕を組んで唸る部長だけれど、感心している場合じゃないから。というか、この様子からするとたいして急いでいないじゃないですか。

この部長はせっかちな性格だから、きっと余裕を持って承認をもらっておきたいのだろう。その気持ちもわからなくないが、こちらだって忙しいのだ。


「社長も午後は会議がありますので、明日まででもよろしければそのほうが確実にサインしていただけるかと」

「んー、やっぱりそうだよねぇ。じゃあ、あとで契約書届けるから明日までにお願い」

「申し訳ありません」

「大丈夫だよ。ダメもとだったし、気にしないで」


部長は丁寧に頭を下げる私の肩をポンポンと叩き、特に気分を害した様子もなく笑って去っていく。
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