不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
しかし、耀は周りの人たちなどお構いなしに、私の前に跪く。驚いて目を丸くしたのもつかの間、片足を軽く持ち上げられ、脱げてしまったヒールを履かされた。

その姿は、まさに王子様さながら。こんなふうにされたら、否応なく胸がときめく。

さっきから脈拍はおかしいし、体温調節もうまくできない。本当にシンデレラにでもなったつもりなんだろうか。キモいよ、私。

乙女な自分には慣れていないから、ものすごくむず痒くて俯いていると、耀が私の顔を覗き込んでいたずらっぽく口角を上げる。


「どう? お姫様になった気分は」


私の心が見透かされているようでいたたまれず、目を逸らして口を尖らせる。


「……最悪」

「素直じゃないんだから」


つい無愛想な言葉を吐いてしまったが、彼はそれが本心ではないとわかっているらしく、余裕の笑みを浮かべて立ち上がった。

耀と一緒にいると、つんけんしている自分がとても大人げなく感じる。今の彼の行動は仕返しの一部だとしても、助けてくれたことには違いないのだし……。


「でも、ありがとう」


やっぱりお礼くらいは言っておこうと思い、きちんと伝えた。

それが意外だったのか、耀は目を丸くする。しかしすぐに口元をほころばせ、「前言撤回する」と言った。
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