不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
「ねぇ、いつまでこうしてるつもり?」

「別れるまで。なっちゃん手冷たいし」


耀は繋いだ私の手を自分の口元に近づけ、はーっと温かい息を吹きかけた。

その仕草に幾度となくドキッとしつつ、自然にこんなことができる男がいるとは、と妙に感心すらしてしまう。

「女の子かっ」とツッコみ、手を離そうとするも、強くギュッと握られて阻止される。少々おかしな攻防戦を繰り広げた結果、敵わないようなので諦め、力を抜いた。

なんでこんなカップルみたいなことをしているんだろうか……。真面目に考えるとよくわからなくなってくるので、とにかく早く帰りたい一心で問いかける。


「耀の家の最寄り駅は?」

「天王町。最近引っ越したんだ」

「げっ、同じじゃない……」

「ほんと? じゃあしばらくこうしていられるな」


嬉しそうに微笑む耀は、まさかの事実に顔をしかめる私に、「あからさまに嫌そうな顔しない」とたしなめた。

それから、案の定ずっとくっついていることになって参ってしまった。ただ、混雑する電車内で私を壁側に立たせ、守るように身体で囲っていてくれたのは乙女心をくすぐられる。
< 40 / 124 >

この作品をシェア

pagetop