不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
しかし、天王町駅で降りても私と同じ方向に歩いている。さすがにこの辺りでお別れとなるはずなのに。


「ちょっと、本当にどこまでついてくるの」

「僕の家もこっちなんだって。ほら、あの白いマンション」


指差されたほうを見やり、私は目を見開いて絶句した。

彼の指の先にあるのは、少し離れたところに上層階が見えている、十階建てのオフホワイトのマンション。築五年でまだまだ綺麗な、私も毎日帰っているそこだったのだ。


「う、嘘でしょ……!?」

「え、まさかマンションも同じ?」


唖然とする私の理由に耀も気がついたらしく、かなり驚いている様子。


「すごい、本当に運命的」


目をキラキラさせてそう呟くものだから、私は再び「女の子か!」とツッコんだ。

いや、それどころじゃない。同じマンションに住んでいるということは、会う確率がますます高まったということ。今以上にかまわれてしまうではないか。

それ以前に、なぜあそこに引っ越してきたのかと考えると、万が一の恐ろしい可能性が過ぎり、私は身を引いて怪訝な顔をする。
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