不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
「あんた、まさかストーカー? もしくは探偵雇って調べたりとか……」

「そんな物騒なことするくらいなら、とっくに近づいてるよ」


耀は呆れ顔で私の想像を一蹴した。まぁ、もちろん私も本気で思ったわけではないが。

こんな偶然があるんだな、と怖いくらいに感じていると、彼は頼もしい笑みを浮かべて言う。


「逆に、そういう危ないやつから守ってあげる。僕にとって、君はお姫様だから」


恥ずかしいセリフをさらりと口にされ、冗談に決まっているのにまた心臓が反応してしまった。

この男は、本当に私の調子を狂わすのが上手い。自分の中に眠っている乙女な部分を呼び起こされると、どうしたらいいかわからなくなる。

そして、これは口先だけなのだろうと思うと、胸の奥がつねられたみたいにちょっとだけ痛くなるのだ。

あなたの仕返し、やっぱり結構効果的かもしれないよ。

複雑でもどかしい気持ちを抱く私は、すっかり温まった指先に無意識に力を込め、彼の手をきゅっと握っていた。

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