不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています

昨夜、耀は私を五階の部屋まで送り届けると、からかったり無駄話をしたりすることもなく、すぐに自分の部屋へ帰っていった。

あいつは九階に住んでいるらしい。なんとなく負けた気分になったものの、部屋まで送ってもらえるのはやはり安心だし、なんだかんだ言って悪くはない。

そうして今日出社すると、早々と昨日の一件を耳にした秘書課の仲間たちが、予想通り私に群がってきた。

年下からおばさままで三人の同僚に取り囲まれ、いじめられているか、もしくはパパラッチに追われる女優のような構図になる。


「ねぇねぇ綾瀬さん、加々美部長とどんな関係なんですか!?」


ほら出た、どっかの記者みたいに聞いてくる人。“恋人です~”っていう返事を期待しているのかもしれないけれど、たとえそうでも他人に正直に答える気はさらさらない。


「私、泉堂社長と付き合ってるのかなって勝手に思っちゃってたけど違ったんですね!」


何食わぬ顔で地雷を踏んだわね。社長と付き合えていたら、もっと毎日幸せそうにしてるわよ。


「いいなぁ、私もイケメンにお姫様抱っこされたいわ~」


マッチョや力士がやってるイベントに参加すればやってもらえるんじゃないですかね。イケメンかどうかは知らないけど。
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