不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
口々に話しかけられ、言いたい放題の彼女たちに心の中で応戦する。

これだから女は面倒だ。私が誰とどうなろうと、皆さんにはなんの得にもならないのだから、騒ぎ立てて無駄な労力を使わないほうがいいのにね。

少々うんざりするも、それを感じさせない笑顔で無難に答えておく。


「彼はただの同級生です。昨日は、ヒールが脱げた私のそばにたまたまいたから気遣ってくれただけですよ。誰にでも優しい人だから」

「またまた~」


彼女たちは私の言葉をあまり本気にせず、それからもしばらくこの話題で盛り上がっていた。

私は間違ったことは言っていない。ただ、耀は誰にでも優しいが、誰にでもお姫様抱っこをしたり、手を繋いだりはしない人だと思っている。

そういう軽いタイプではないと、なぜか断言できるのだ。なにも根拠はないのに、不思議と信じられる。

おそらく、甘言蜜語で惑わせてくるのも私に対してだけなのだろう。あれは、本当に私のことが嫌いでやっていることなんだろうか。

かと言って、口が悪くて可愛げのない私が好かれているとも到底思えないし……。

気がつけば堂々巡りなことばかり考えていて、むしゃくしゃしてきた私は、今日の仕事が終わったらある人に連絡を取ることに決めた。

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