不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
“とりあえずビール!”という謎のルールもないし、お酌もしなくていいし最高だわ。

さっそく出された大好きな梅サワーと、なんこつのから揚げをいただきながらおひとり様の時間を満喫していると、すぐそばに人がやってくる気配がした。


「すみません、隣いいですか?」


そう問いかけられて見上げれば、ニヒルな笑顔を向ける四十代後半くらいの男性がいる。細すぎず太くもない体型も、イケメンというほどではなく三枚目俳優のような顔立ちも、ちょうどいい感じの人だ。

彼にもお連れ様はいないらしい。席はほぼ埋まっているので、私も微笑んで「えぇ、どうぞ」と了承した。

引き続き美味しい料理を楽しんでいると、しばらくして隣の男性が気さくに話しかけてくる。


「お姉さんがひとりで飲んでるなんて珍しいね。ここにはよく来るの?」

「いえ、今日が初めてです。料理も美味しいし、いいお店を見つけました」

「俺も初めてなんだよ。雰囲気がいいよね」


感心した様子で言う彼に、私も口角を上げて頷く。

こうやって知らない人と言葉を交わすことは時々ある。二言三言なら全然苦ではないし、相手が店員なら顔を覚えてもらえるから常連になれたりもする。しかし……。
< 51 / 124 >

この作品をシェア

pagetop