不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
「気安く触れないでいただけますか、この子に」


男性の腕を掴み、冷静な声で言い放ったのは、耀だ。冷たく鋭さを感じる瞳で、卑しそうに見下ろしている。


「耀っ……!?」

「彼女、嫌がってるのわかりませんか? お楽しみの相手を探すなら他をあたってください」


驚きの声を漏らす私に構わず、彼は不機嫌さを露わにしつつも抑揚のない口調でそう告げた。

こんな怖い顔をする耀は見たことがない。なぜここにいるのかわからないが、助けてくれてとてもホッとしている。

邪魔をされた男性は、突然現れた耀に動揺を隠せない様子で、彼の手を振り払うと慌てふためき始める。


「なっ、なんなんだ、いきなり……君の彼氏か? さっきいないと言っていただろう!?」

「彼氏じゃありませんって」


私は呆れながら食い気味で返した。

滑稽な動揺っぷりを見せる彼に、目は笑っていない耀が口角だけ上げ、先ほどより若干柔らかい声で言う。


「女の子引っかけるより、早く帰られたほうがいいですよ。奥さんが待っていらっしゃるでしょうし」


その言葉に、彼はあからさまにギクリとする。
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