不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
「一昨日来やがれ、三枚目以下のゲス野郎」


最後に、面と向かって言うのはさすがに自重した悪態をついた。ふう、と息を吐いてヒートアップした頭を徐々に通常運転に戻していく。

そうしてやっと周りが見えてきて、はっとした。お客さんたちが静まり返って、私に注目していることに気づいたから。

やばっ……、皆の楽しい食事の邪魔をして、私も人のこと言えないじゃない!


「す、すみません! 皆さんの迷惑になっているのは私も同じでした。大変申し訳ございません!」


我に返った私は飛び上がるように立ち、テーブル席のほうに向かってガバッとお辞儀をした。

本当に申し訳なく思いながら、深々と頭を下げて謝っていると、意外にも和やかな笑い声が聞こえてくる。

恐る恐る頭を上げれば、人のよさそうなおじさん方がにこやかに声をかけてくれる。


「大丈夫大丈夫、気にすんな」

「お姉さんカッコいいね~」


皆さんスカッとしたらしき様子で上機嫌なので、私は拍子抜けしてしまった。店主のおじさんも、親指を立てて“いいねポーズ”してくれているし。なんて心の広い人たちなの……。
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