不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
店内には再び和やかな雰囲気が訪れ、先ほどのオジサマの席には耀が座った。彼がビールを頼んでから、ここに来た理由を尋ねてみる。


「耀はなんでここに?」

「久礼社長と一回来たことがあって、そのときに気に入ったんだ。金曜日だし、なんとなく飲もうかなー……ってぷらっと入ったら、なっちゃんが絡まれてたからびっくりしたよ」


なるほど、と納得しつつ苦笑を漏らした。また仕返しをされるかもしれないから会ったら困ると思っていたけれど、今日ばかりはこの偶然に感謝だ。

先ほどの失態を流すように、残っていた梅サワーを飲み干す。あの男がいなくなったおかげで、また美味しく味わうことができて幸せ。

そういえば、耀と飲むなんて初めてだ。もうおひとり様ではないが、彼となら気を遣わずに過ごせるからまったく嫌じゃない。

再び気分がよくなってきて、二杯目のサワーを注文する。ふたりでまったりと飲み食いしていると、耀がなにげなく話し出す。


「さっき、ビシッと言い放ってるなっちゃんを見てたら、小学校時代を思い出した。いじめられてる紗菜ちゃんを助けてあげてたときのこと」

「あー……あったね、そんなことが」
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