不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
性悪な私の発言がきっかけで、武田くんを含め、黙って従うしかなかった仲間の女子たちの意識も変わったように思えた。

彼女はとってもお怒りになって、今度は私を標的にしようとしたみたいだけれど、元々一匹狼だった私に無視は効果がないし、口の悪さでも勝てはしない。他の皆も呆れていたので、特に被害を受けることなく事態は終息したのだった。

私の毒舌がたぶん役立ったと思われる、唯一のエピソードだわ……。


「でも、あれは別に助けたとか立派なものじゃなくて、いじめてた女子にムカついたからやり返しただけよ」


単純に一泡吹かせてやりたかっただけなのよね、と苦笑するも、耀の優しい笑みは変わらない。


「そうだとしても、僕はなっちゃんの大胆さがカッコいいなって思った。紗菜ちゃんだって嬉しかったはずだよ」


彼の言葉で、そういえば紗菜とも似たような会話をしたっけ、と思い出す。

いじめっ子を撃退したあと、紗菜はお礼を言ってきた。『別に助けたわけじゃないから』と素っ気なく返した私に、彼女は『それでも、私は嬉しかったから。ありがとう』と笑顔で言った。

それからだ、私たちが親友と呼べる関係になったのは。内気だった紗菜も、この頃から明るく積極的な子になったと思う。
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