不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
◇密接オーバーナイト
初めて耀とふたりでお酒を酌み交わした夜は、いつになく酔いが回ってしまった。
私はアルコールは強いほうで、潰れることはほとんどなく、あの晩ももちろん泥酔したわけではない。ただ、それほど量を飲んでいないにもかかわらずふわふわとして、饒舌になっていたように思う。
なにをしゃべったかは覚えていないものの、耀が『酔ったなっちゃんは毒舌にキレが増してる』と言ってケラケラ笑っていたから、口の悪さは健在だったのだろう。
酔っても可愛くなれない自分には呆れるが、耀は終始楽しそうに私に付き合ってくれて、帰りもちゃんと部屋の前まで送り届けてくれた。
あのとき、踵を返した彼の背中を見て、無性に切なくなった。なぜ時折胸が痛むのか、その理由にはもう感づいている。
それなのに認めることをためらっているのは、報われるかどうかわからないという不安があるからに他ならない。
こんなにもどかしい気持ちになるのは久々で、気がつくとつい耀のことを考えてしまっているので、仕事中はとにかく集中するよう心がけている。
Akaruから届いたデザインのラフを確認している今は、その素敵さにうっとりしてしまい、また違う意味で集中しなければならないのだが。