不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
「あ、いえ、そんなことは……!」

「珍しく動揺していますね」


社長は私の心の中がお見通しらしく、いたずらっぽくクスッと笑った。さらに、「君がシンデレラさながらだったという話も耳にしましたよ」と補足され、急激に顔が熱くなる。

社長にまで知られていたなんて、恥ずかしいことこの上ない。今さらながら耀に文句を言いたくなりつつ、俯いて軽く頭を下げる。


「失礼いたしました……社内であんなことを」

「構いませんよ。私でもそうしていたかもしません。好意を抱く相手になら」


彼の予想外の返答にドキリとする。社長自身の場合なのに、耀も私に気があるかのように期待させられてしまうではないか。

というか、この人もするのね、お姫様抱っこ……。その姿は想像しただけで萌えるわ。

少々考えが脱線しかかっていると、社長は少し歩調を緩め、こちらにしっかりと顔を向ける。


「私は応援しています。君にも幸せになってもらいたいので」


真面目な表情の彼は、本当にそう思ってくれているのだろうと伝わってくる。

彼に想いを寄せていた以前なら、こんなふうに言われたらものすごく切なくなっていたはず。でも今は、彼の気持ちをありがたく受け止められる。

ただ、悲しいかな幸せになる保証も自信もないので、とりあえず「……頑張ります」と、苦笑を漏らしつつ答えた。


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