不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています

十一月も中旬に差しかかり、街中は早くもクリスマスムードが漂っている。

あれから耀には会っていない。本社にも来ていないみたいだし、マンション付近でも会うことはない。こうなることを望んでいたのに、なんとなく物寂しい気分。

仕事が忙しいんだろうか。風邪をひいたりしていないかな。

ぼんやりとそんなことを考えながら歯を磨いていた午後十一時、インターホンの音が鳴り響いた。私はギョッとしつつ顔をしかめる。

誰よ、こんな時間にやってくる非常識な人間は! ちょっと不気味だし。

不審に思うも急いで口をゆすぎ、若干恐る恐るモニターを覗く。その瞬間、目を見開いた。


「えっ、耀?」


思わず声を上げてまじまじと画面を見ても、ナチュラルショートの髪型に整った顔は間違いなく耀だ。

警戒心が緩み、どうしたのかという気持ちが逸る。着替えることにまで気が回らず、プライベート感満載のパジャマ姿のまま玄関に向かった。

ドアを開ければ、珍しく気怠げに立つ彼が、疲れたような笑顔を見せて口を開く。


「ただいま」

「部屋が違います」


開口一番にツッコんでしまった。“ただいま”のひとことにキュンとした自分も恥ずかしくて。
< 71 / 124 >

この作品をシェア

pagetop