不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
十一月も中旬に差しかかり、街中は早くもクリスマスムードが漂っている。
あれから耀には会っていない。本社にも来ていないみたいだし、マンション付近でも会うことはない。こうなることを望んでいたのに、なんとなく物寂しい気分。
仕事が忙しいんだろうか。風邪をひいたりしていないかな。
ぼんやりとそんなことを考えながら歯を磨いていた午後十一時、インターホンの音が鳴り響いた。私はギョッとしつつ顔をしかめる。
誰よ、こんな時間にやってくる非常識な人間は! ちょっと不気味だし。
不審に思うも急いで口をゆすぎ、若干恐る恐るモニターを覗く。その瞬間、目を見開いた。
「えっ、耀?」
思わず声を上げてまじまじと画面を見ても、ナチュラルショートの髪型に整った顔は間違いなく耀だ。
警戒心が緩み、どうしたのかという気持ちが逸る。着替えることにまで気が回らず、プライベート感満載のパジャマ姿のまま玄関に向かった。
ドアを開ければ、珍しく気怠げに立つ彼が、疲れたような笑顔を見せて口を開く。
「ただいま」
「部屋が違います」
開口一番にツッコんでしまった。“ただいま”のひとことにキュンとした自分も恥ずかしくて。