不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
……聞き慣れたアラームの音が、やけに遠くのほうで鳴っている。とても温かくて布団から出たくないけれど、止めなくちゃ。
徐々に意識が覚醒してきて、視界もはっきりとしてくる。部屋の中心にあるテーブルの向こうの壁側に、もぬけの殻となったマットレスが目に映り、私の頭にハテナマークが浮かんだ。
あれ? 昨日、私あそこで寝たよね。ベッドは耀に譲って。でも、今私がいるのって……。
おかしな状況に眠気も覚め、上体を起こそうとしたとき。
「ひぁっ!」
隣に耀が寝ていることに気づき、思わず変な声を上げて、勢いよく起き上がった。
いったい、なにがどうなって私はここに移動したわけ? 夢遊病の癖(へき)でもあったの!?
驚きと困惑で動けずにいると、耀がピクリと反応し、「ん……」とセクシーな声を漏らして寝返りを打つ。そして私のほうに身体を向け、うっすらと瞼を開いた。
「あ……おはよ、なっちゃん」
私を認識した彼は、ふにゃりと無防備な笑みを見せる。まだ眠そうなその顔も可愛いけれど、今はそれに胸キュンしている場合ではない。