不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
一階で降り、エントランスに向かおうとすると、併設している工場との連絡通路からひとりの女性社員がやってきた。
白衣姿に眼鏡をかけた彼女は、商品開発研究課で働くガチガチのリケジョ研究員の倉橋(くらはし)さん。そして、私と彼女には少々因縁がある。
私たちに気づいた倉橋さんは、ぺこりと会釈して階段のほうへ向かっていく。すると、社長が足を止め、「すみません、少しだけ待っていてください」と私に声をかけた。
彼女に歩み寄っていくひとりの男の姿を、私はただ目で追うしかない。
「倉橋さん」
「は、はい!?」
呼び留められ、目を丸くして振り向いた彼女に、社長はさりげなく顔を近づけてなにか短く伝える。
その直後、倉橋さんの頬が薄紅色に染まるのがわかった。私はそれを思いっきり据わった目で眺める。
……あー、どうせ今夜のデートの約束でもされたんでしょ。わかりやすすぎるのよ、あの子。一応元ライバルの前なんだから、もうちょっと気を遣いなさい、気を。
そう、女性社員が憧れてやまない泉堂社長は、密かに倉橋さんと付き合っているのだ。お堅くて色気もなく、頭の中は元素や化学式で埋まっている彼女のどこがいいのか、理解に苦しむ。
白衣姿に眼鏡をかけた彼女は、商品開発研究課で働くガチガチのリケジョ研究員の倉橋(くらはし)さん。そして、私と彼女には少々因縁がある。
私たちに気づいた倉橋さんは、ぺこりと会釈して階段のほうへ向かっていく。すると、社長が足を止め、「すみません、少しだけ待っていてください」と私に声をかけた。
彼女に歩み寄っていくひとりの男の姿を、私はただ目で追うしかない。
「倉橋さん」
「は、はい!?」
呼び留められ、目を丸くして振り向いた彼女に、社長はさりげなく顔を近づけてなにか短く伝える。
その直後、倉橋さんの頬が薄紅色に染まるのがわかった。私はそれを思いっきり据わった目で眺める。
……あー、どうせ今夜のデートの約束でもされたんでしょ。わかりやすすぎるのよ、あの子。一応元ライバルの前なんだから、もうちょっと気を遣いなさい、気を。
そう、女性社員が憧れてやまない泉堂社長は、密かに倉橋さんと付き合っているのだ。お堅くて色気もなく、頭の中は元素や化学式で埋まっている彼女のどこがいいのか、理解に苦しむ。