不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
私の毒舌に火をつけられるって、まさかドM?と勝手に気持ち悪い想像をしていると、彼はさらに接近してくる。そして、嘲るような笑みを浮かべた。


「毒を隠し持っているのに、上辺は魅力的で人を惹きつける……まるで魔女だな、君は」


決して褒めてはいない言葉を投げられ、私は彼に険しい視線を突き刺す。魔女と言われて怒ったわけではなく、ただただこの男が不快で。

しかし、私の睨みなどものともしない彼は、私の耳に顔を近づけて強引に約束を取りつける。


「金曜日の夜でどうかな。俺に暴言を吐いたことをバラされる度胸があるなら、断ってくれていいぞ」


……卑怯な男。断れるわけないじゃない、取引にも悪影響を及ぼしかねないというのに。

私の本性を暴かれるだけならまだしも、万が一名誉棄損だなんて難癖をつけられでもしたら、会社にまで迷惑をかけてしまう。そんな事態は絶対に避けたい。

反論できず、ぐっと拳を握って唇を真一文字に結ぶ。私の様子に、長沼さんは満足げに口角を上げ、「また連絡する」と告げて横を通り過ぎていく。

遠ざかる足音を聞きながら、私は大きなため息を吐き出してうなだれた。

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