不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
それでも、明日は行く以外の選択肢はないという気持ちは変わらないまま、エレベーターに乗り込む。


「なんでそんなこと……これは私の会社や仕事にも関わってくることなの。断るつもりはないから」

「その言い方からすると、やっぱり会社同士の接待じゃなさそうだね」


意志が固いことを示したものの、揚げ足を取られて“しまった”と思った。私ってば、余計なことを……。

階数のボタンのほうに視線を逸らしても、耀が不安や苛立ちを露わにしているのが伝わってくる。


「なにか裏があるんだろ。そんな怪しすぎる食事会に行かせられるわけない」


一段と強い口調で言われ、ギシリと胸が軋むような感覚を覚えた。

私が男性とふたりきりになることを心配してくれているのはわかる。けれど、さすがに過保護すぎやしないだろうか。

私は耀の恋人でもなんでもない。友達として助けてもらうのは、子供の頃だけで十分だ。

自分でなんとかしなければいけないという意固地な気持ちも相まって、心がギスギスしてくる。


「どうしてそんなに干渉するのよ? 耀からしたら、私はただのクライアントの社員で、ただの友達。相手を指図できる立場じゃないでしょう、お互いに。お願いだから放っておいて」
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