未然見合い
「え、ちょっとどういうこと!?」
嗚呼、まだ面倒なのが残っていたわ。
顔を顰めて振り返るあたり言外にそう匂わせることは充分できた筈、なのだけれど。
「あのイケメン誰よー!!好美ッッ」
ぐわんぐわん肩を揺らしてくるこの女がそれを汲めていないことは、まさしく一目瞭然な訳で。
その反動でズルッと肩を滑ったドレスワンピに半ば呆然とするあたし。
「自分で自己紹介してきなさいよ。多分すぐ相手してくれるわよ、良かったじゃない」
「名前だけでも教えてよっ」
「生憎だけど知らないの、あたしも」
鼻先がくっ付いてしまうほど顔を寄せ合った女ふたり、小声で会話を続けていた。
そんな行動を取りながらも内心で安堵するあたしが居て。だって、この様子じゃ同僚はきっとあの後輩クンと帰ってくれると思ったから。
肩からずれ落ちた紐をクイッと指先で引っ張り上げ、犬のように例の後輩男へと駆けていった彼女を白けた眼差しで見詰める。
しかしながら、あたしは重大過ぎる問題を取り零していたらしい。
「――――……好美チャン?」
背後から鼓膜を揺らした低音に、ぞわりと肌が粟立つのを感じたからだ。