未然見合い
* * *
「―――……だる」
溜め息混じりにそう口にした俺は、ずり落ちてくる瞼に抗いつつも通話の余韻に浸っていた。
最後の言葉、あいつは聞き取れなかったみたいだったけれど。
無自覚の内に「そう」なってくれたのが俺からしたらこの上なく嬉しいし、別にいいかなんて。
―――「好美。変わったよな」
当の本人である俺ですら気付かなかった言葉の出先。
自分のことより他人のこと。あいつ自身が気付かない内にそんな考えを巡らせられるようになっていることが窺えて、思わず飛び出した台詞だった。
だって、連休中に行く予定だったところも確実にパァじゃん。
それなのに笑って済ませた好美。仕舞いには俺の心配まで。
「……、マジでイイ女じゃん……」
誰も居ない部屋で吐き出した言葉と一緒に飛び出したのは、熱に浮かされた僅かな吐息。