未然見合い







- 数年前 -






『好美ー!翔ちゃん来てくれたよー』

『(……うっざ…、)』

『ちょっと好美ー!』

『分かったわかったって!頭痛いんだから叫ばないでよー』





ガンガン痛みを訴えてくる頭を両手で押さえ込みながら、階下から叫号をとばしてくる母親相手に叫び返す。

あーもう、なんでこんな時に来るかな。風邪だって言ってるじゃん。



そうこうしている内に階段をのぼってくる足音。

翔太だろ絶対。あたしが風邪で寝込んでるのを好い事に揶揄いに来やがったな、あいつ。







『寝てるんで起こさないでくださーい』








そんな風に声を張り上げて予防線を張るけれど、然して意味は無いんだろうなと思った。

だって奴は、




『バッカ好美、風邪とかバカが引いたら意味ないだろ』

『バカバカ言わないでよー…、頭痛いんだから』

『うるせー、プリント持って来てやったんだから感謝しろって』

『そんな余裕ないんですー。すいませーん』

『………』

『ケケケッ』

『お前ゼッタイ仮病だろ』






だって奴は、そんなの気にするヤツじゃないから。

まあ、この場合は「あたしたちの関係が」そんなことを気にさせる間柄じゃなかったと言ったほうが正しいんだろうけれど。







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