未然見合い
ちらりと視線を持ち上げれば、眉尻を吊り上げてあたしを見下ろす翔太少年の姿。
うお、こっわ。
『分かったってばー、そんなに怒ったらせっかくのプリティーフェイスが台無しだよん』
『………ほう』
『あででででッ!痛いいたい痛ーいッ』
ぐりぐりと握り拳であたしの頭をぐわし!鷲掴み、攻撃を仕掛けてくる翔太に最早愕然だった。
病人に対する行動がそれなんて幼馴染として恥ずかしい…!
『さいっあくー』
『お前がな』
『あたし8度以上あるんですけど』
『じゃあもっと病人らしく振る舞えよ』
『お前……、可愛くない奴だな』
『それ俺の台詞』
熱があるにも関わらず暴れた所為で、正直心身共にへとへとだった。
重力に従うようにベッドに倒れ込んだあたしは、デスクに付属してきたチェアに腰掛け此方を見下ろす翔太を睨み上げる。
が、体力も限界で直ぐにやめた。
『………あれ』
目線が低くなったお陰で、今まで視界にも映らなかったものがあたしへと存在を訴え掛け始めて。
思わず目を瞬かせながらそれを数秒見詰め、すぐに翔太へと視線をのぼらせる。