未然見合い
『………なに、アレ』
ぱちぱちと瞬きを繰り返した挙句にそんな台詞を向かわせたあたしを見て、肩を揺らした翔太の動揺ぶりは面白いほどだった。
みるみる内に紅潮していく頬。
『別に』
しかしながら顔を俯けたっぷりと沈黙を挿んだ末に翔太少年から飛び出した台詞は、そんな陳腐なものだった訳で。
にやにやと破顔も好いとこで行く末を見守っていたあたしからすれば、『はあ?』と飛び出した言葉は当然だと思う。てか絶対そう!
『別にってなにさ!なんでポカリとウイダーと冷えピタがあんの!』
『おまッ………そこは突っ込まないのが優しさだろ!なんで大声で言うんだよ!』
『あたしの為に買ってきてくれたんでしょー。もー、翔太やーさし!』
『別にそんなんじゃねぇし』
『じゃあどんなんだよ』
『うるせぇな。早く寝ろよバカ』
『バカって言うほうが馬鹿なんですー』
『うざうざうざ』
最終的にはいつも通り罵倒大会の幕が上がっていた訳なのだけれど。
だけれど、視界の端に映り込むビニール袋の存在はあたしの心をぽかぽかにしてくれた。
それはきっと、抗いようもない事実だった。