未然見合い
そんなことをしている内に、高校を卒業して翔太とは疎遠になっていった。
当たり前だ。
あたしは、彼の言葉に耳を傾けようともしなかったんだから。
「ほんと、馬鹿……」
暫く回想に浸っていたあとに現実を見てみると、何やってるんだと自分を殴り飛ばしたくなる。
十年くらい、か。
傷付いたあの頃の記憶は直ぐに出てこなかったとしても、あんなに普通に話すなんて。
いや、違うか。
普通に接することが出来たなんて、良くやったほうかも。
寝転んでいた身体を起こして、ブラウンに染色された自らの髪を掻き上げた。
視線を部屋の隅に置かれた時計に向ければ、此処に来てから優に二時間も経っていて。
「うわ、やば」
思わずそう洩らしたあと、母親が購入したショップ袋に腕を伸ばしてハッとした。
リビングにまだ翔太が居たら、どうしよう。
普通に喋れる?普通に笑える?
「――…無理、だ」