未然見合い
へなへな、と。
その場に座りこめば、強気な意志とは裏腹に涙腺が緩みきっていて。
「なんであんなヤツ、まだ好きなんだろう……」
あたしが結婚出来ない主な理由は、これだ。
どんな男と付き合っても、キスをしても、抱かれても。
"何か違う"
"しっくりこない"
"物足りない"
そんな最低な感情に駆られて、結局別れを切り出してしまう。
明瞭に"誰が"とは考えなくても、知らずの内に心が他の男じゃ駄目だと告げていたんだ。
「…、…最悪」
思わず両手で顔を覆い、溜め息混じりに本音を吐き出す。
なんでこんな感情に囚われなきゃいけないのよ。
あたしばっかり、馬鹿みたい。
これからの毎日、否が応でも翔太を想ってしまうんだろう。
嗚呼、もう。
ますます"お見合い"なんて無意味じゃないか。
「っ、男に生まれれば良かった……」
涙混じりに零した言葉は、翔太の"現場"を目にしてから幾度となく嘆願した叫び。