未然見合い
と、そのとき。
「きゃー、好ちゃんったらダイターン!いけいけ、翔を攻めてしまえ!」
「やあだ、やっぱり翔ちゃんが好美を攻めて~!いけいけ翔ちゃん、押し倒せ!」
「押、し、倒、せ!」
「押、し、倒、せ!」
「「きゃ~~~~!!」」
「「…、……」」
翔太に跨ったままの状態で、やけに黄色い声の飛び交う入口を黙視。
言わずもがな、きゃあきゃあ叫んでいるのは仲良し二人組。もとい、翔太とあたしの母親で。
「もしかして、見られてた…?」
「……かもな」
「かもな、って!あんた鍵閉めないで入ったでしょ…!」
「なに、閉めて欲しかったん?」
―――嗚呼、もう、こいつは。
あたしの負けず嫌いにスイッチが入る。
奴の首裏に指先を添えて、ぐっと引き寄せればその瞳に動揺の色が迸った。
まだまだ、こんなもんじゃ離してやんない。
「――…欲しかった、かもね」
あたしに出来る精一杯の甘美な声でそう囁けば、翔太の頬が朱色に染まった。