未然見合い





――――――――――…




「好美、こーのーみ」

「、……あ」

「わり、待たせた」


ウイーン、と微かな機械音を響かせて開いたのは助手席側の窓で。

寒さに刺激されてつんとする鼻を手で押さえながら車に乗り込めば、何やら視線を感じて右側へと目を向けた。





「てっきり中で待ってると思ってた」

「……すみませんね」

「いや、そうじゃねーよ」


顔を顰めてそう言葉にしたあたしに苦笑混じりの笑みを向けた翔太は、ゆるりと目元を穏やかなものに変えて口を開く。







「寒かっただろって」

「…、……」

「まあ、俺的には中でナンパでもされてんじゃねーかって冷や冷やしたから嬉しいんだけど」



「っ、」

「ありがと、好美ちゃん」


…、……なんで。

此方の目元に優しく触れたその指にまともな言葉も返せないまま、前へと向き直った翔太はチェンジレバーへと手を伸ばす。






それを黙って見据えていたあたしだったけれど、


「翔太」


小さく彼の名を口にしては、その骨張った手のひらに自分のそれを重ねてみた。





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