未然見合い
「――…え?」
思わずきょとんと間抜け面を晒して翔太に視線を合わせてしまった。
そんな此方の様子を見て、些か慌てた表情を浮かべた男はと言うと。
「わり、聞かなかったことにして」
顔を背けてそんな言葉を零すものだから。
「――いや、あの、違くてさ……」
「好美?」
「何て言うか…、その」
しどろもどろに視線をさ迷わせて言葉を落としていくあたしを見て、今度は此方の番だと言わんばかりにきょとんと目を丸くする翔太。
そんな目線も相俟って、事実ますます言い辛くなってしまった訳なのだけれど。
「最初から泊まると、思ってたんだけど」
「俺が?」
「うん」
「好美の家に?」
「――それ以外に何があるのよ…、」
余りに質問で返してくる翔太に眉根を寄せてそう口にすれば、一気に顔色を戻した男が緊と此方に詰め寄ってきて。
「やべぇ、嬉しい」
「っ」
「さんきゅ好美ちゃん」
その低い声音で落とされる媚薬のように甘い言葉に、あたしは心底弱い。