未然見合い
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「ごちそーさん、美味かった」
「………、」
「好美?」
「――え、なに?」
ぼんやりと視線を外していたあたしは、鼓膜に届く翔太の声にハッとして顔を上げた。
そんな此方の様子を見て些か首を捻った彼は、少し間を開けてから言葉を落としていく。
「具合悪い?」
「ううん、全く!なんで?」
「……いや、なんか上の空だったから」
暫くは眉根を寄せて何か思案していたらしい翔太だが、徐に視線を戻したかと思えば思い掛けない言葉を口にし出した。
「ま、そうだよな」
「なに?」
「好美は昔から風邪引かないことだけが取り柄だっ――」
その瞬間。
ぶっちん、と。あたしの中の何かが千切れる音が盛大に胸の内で反響した。
「余計なお世話だっつーの!」
今し方何や彼やと思考を巡らせていたことなどすっかり頭の中から抜け落ち、思い切り眉尻を吊り上げたあたしは馬乗りになって翔太に掴み掛かる。