未然見合い
「ちょ、おま待てって!」
「なんでいっつもそうなのよ!大体あたしが誰のためにこんな考えまくってると思っ、てー……」
「……は?」
「………、」
言葉尻。
言わずもがな萎んでしまったあたしは、自らの発言の錯誤について物凄く後悔に苛まれていた。
言わなくても良かったこと。
……否、全く以て口にするべきでは無い台詞だった筈。
内心冷や汗だらだらのあたしは勢い良く翔太から顔を背け、そろりと何気なく距離を隔てようと腰を上げた。
馬乗りになっていたんだから、翔太に気付かれない訳が無いのに。
「――なぁ、」
「…っ」
「それってどういう意味?」
片方の口角を軽く持ち上げた男があたしの腕を掴み、自らの胸板まで引き寄せるまで大凡1.2秒。
スローモーションのように近付く距離に伴って暴れ出すのはあたしの心臓。
「――…ッ、」
「教えて好美ちゃん」
距離がゼロになったとき、早鐘を打つ余り壊れてしまうんじゃないかと。
思わずそんなことを考えてしまうくらい、あたしの心臓の鼓動スピードは甚だしいものだった。