未然見合い





―――だけれどそれはあたしにだって言えること。


「お綺麗ですね」

「……随分と率直なんですね」

「本音は隠しておけないタチなので」







今まで色んな男を見てきたけれど、こういう自分を常にトップに持ってきたがる奴は。


「――…先輩には勿体無いですよ」

「……、」


大抵、女をステータスの一抹くらいにしか思っていない。








「俺と遊んでみません?」


ちょっと掠れた声で呟く言葉は恐らく計算の域内で。

余りにも顕著に口説きに掛かってくる男性に笑みを浮かべることで応酬していると、思い掛けない言葉が鼓膜に届いて心臓が大きく脈打つ。











「―――好美!」











その言葉が聞こえて、彼の姿を視界が捉えた瞬間。

動揺もせず無に近かった表情が綻びを見せ、あたしは呆気なく破顔一笑した。



「……あまり女を甘く見ないほうが良いんじゃない?後輩くん」


その内きっと痛い目に合うから。

去り際にその耳元でそんな囁きを落とせば、目を丸くした男が視界の端に映り込む。







その様子を尻目に流しながら足を向けるのは勿論、翔太の居るところ。






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