未然見合い
したり顔でヒールを進ませるあたしとは裏腹に、キツク眉根を寄せる翔太にきょとんと目を丸くする。
思わず足を止めてそんな彼の様子を見据えていると、
「――………」
「、ちょっと!?」
パシリ、と。
敏速にあたしの腕を掴んだ奴は、そのままの足取りで何処かへと向かっていくから驚いた。
周りにいた人たちは一瞬だけ此方に視線を向けるが、直ぐに何事もなかったかのようにそれを逸らしていく。
あたしの視界に映るのはその大きな背中のみ。
ジャケットは自らの部署に置いてきたのか、程好く筋肉のついた身体は白いシャツに包まれていて。
必死に足を動かしてその歩調に合わせていくも、何せ男と女のそれは異なっているのだから容易では無い。
「――、翔太…!」
最後まであたしの問いに答えることは無くて。
ホワイトのプレートに記された「関係者以外立ち入り禁止」の文字を目にすることもないまま、バタンと閉じたドアの音を何処か遠くのものに感じた。