未然見合い
「いきなり何…、てか何処よここ!」
「………」
「ねえ、ちょっと翔太聞いて――」
るの、と。
途中まで紡ぎ掛けた言葉は音に成り切らず、彼の口腔の中で溶けてしまった。
「――…、っ」
前触れの無い口付け。
驚き目を見張りながらそれを受け入れていれば、歯茎に添わされていた舌が次第に抜き取られて。
「――好美、」
「、」
「……いた…」
あたしの両頬を包むのはその骨張った大きな手。
至近距離で切なげに揺れる瞳を目の当りにして、聞き取れなかった言葉をもう一度だけ問うてみる。
「――…すっげぇ妬いた」
鼓膜の最奥まで響いたその言葉に、あたしは骨の髄まで虜になる。
胸の内から溢れ出してしまいそうなほどに、翔太が愛しいと感じてしまったから。
the green-eyed monster
(二人の心の距離が縮まっていく)