未然見合い





「じゃあ、つくってくるからテーブルで待っててね」




そんな言葉を耳にして、尚も穏やかに笑うおばさんに視線を合わせる。

あたしはこのときの自分の表情がどんなものか分からずに居たけれど、あたしの視線を受け取ったおばさんは何かを感じ取ったのか、




「――翔ちゃんね、ずうっと好ちゃんに会いたくてここに通ってたのよ」




耳元でそう呟いたものだからあたしは目を丸くした。

小さな声だったため幸い翔太までは届かなかったらしく、何を言われたのか聞かれたけれど適当に流しておく。







あたしの表情は、泣いてからずっと笑顔を浮かべたままだった。
















――――――――――――…





「おばさん、メニュー聞かなかったけど……」

「いつものだろ。好美だって昔からあれしか頼まなかったじゃん」

「あ!あれってもしかして――」





「「他人丼」」





おばさんが厨房に入ってから、席に着いたあたし達はそんな会話を交わしていて。

思い掛けず重なった言葉に暫し視線を合わせたあと、後々襲ってくる可笑しさに笑い声を上げていた。






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