未然見合い
と、そのとき。
「旦那に心配させてやるか」
「え……、」
「俺と遊んでみるか?朝まで付き合ってやるよ」
思い切り引っ張られたかと思えば、気付いた瞬間には部長に肩を抱かれていて。
目を見張ってその状態を確認していたあたしの耳元で、色気を際限なく放つ男が囁きを落とす。
――そのときだった。
「離せよ」
耳に入った声は酷く聞き覚えのあるもので。
状況に追いつけない。あたしの肩に添えられた部長の手は瞬時に叩かれ、代わりに後ろから伸びてきた腕に拘束される。
「なんだよ翔太、イイトコだったんだから邪魔すんなよ」
「ふざけんなよ」
「あーあーあー、つまんねぇ」
肩を竦めてみせた部長は、破顔一笑すると後ろ手に手をひらひら泳がせて向こうへと姿を消してしまった。
二次会に行く面々は既に次の目的地に向かったらしく、
「――好美」
此処には、不意に現れた翔太とあたしの二人だけ。