未然見合い







「―――ごめん、翔太……でも」

「でも、じゃねえだろ。好美は何でも自分でカタを付けたがる」

「だって恥ずかしいじゃない!」



幾ら振っても離れることのない手首が聊か煩わしい。焦燥を迫り立てる。

叫号をとばすようにそう口にしたあたしに驚いたらしい翔太が口を噤んだことが、気配を通じて伝わってくる。







「悔しいって思うじゃない、翔太よりも上手くなりたいって―――それを隠したかっただけなのに、そんなに掘り下げなくてもいいじゃない!」







こんなの、完全に八つ当たりだ。

恥ずかしさばかりが募って、それに悔しさも相俟って。


料理教室に隠れて申し込んだことが露見したにも関わらず、その事実をすぐに呑みこめるほどあたしは器が大きい訳でも何でもない。








「翔太のほうがずっと上手いのに、そんな相手に平気なカオしてこれからも料理できるとも思えなくて」

「…………好美」

「ずっと内心馬鹿にしてたんじゃないの?よくこんなの作れるなって、振る舞えるなって」




いざ胸中の燻ぶりを言葉にするとなると、こんな風にしか口にできない自分が心底恨めしい。

どうして、素直に可愛く言えないんだろう。







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