未然見合い
「いいじゃん。これからは俺が教えるし」
「………別にいい」
「無理」
「は?」
返答としては些か意味を成さない言葉に呆然として視線を戻せば、まるでその瞬間を狙っていたかのように拘束していた手首を解かれ、代わりに指先を緻密に絡ませられる。
その行動の所為で又もやけたたましく鳴り響く鼓動。
慌てだす唇を引き結ぶことで何とか対処するものの、そんなあたしの行動でさえコイツに取ってみれば微々たるものに他ならないらしい。
―――何故なら、
「他の奴がお前に教えるなんて、俺が無理だって言ってんの」
あたしの旦那は、この心臓が早鐘を打つポイントを的確に把握しているらしいから。
顔を傾け屈む翔太の意図が分かってしまって、あたしは直ぐに降ってくるだろう口付けに身構える。
ささやかな抵抗として、目を瞑ることはしなかったけれど。
彼女の本音とプライド
(安い其れなんて、彼の前では無情にも崩れ去ってしまう)