未然見合い
するとニヤリ、至極面白げに口許を歪めた彼女は一言。
「見た見た。なに? 《相手の女って何だよ、好美の言ってることが全く分かんねえんだけど》ってどういうこと?」
「………、そのまんまよ」
眉根を思い切り寄せてぶっきら棒に返答を向けるあたしと、対照的に「えー」なんて頬を膨らませる同僚。
見る度に苛立ちばかりが募る翔太の文面は早々にタップして切り替え、画面をブラックアウト。
言外に「話はこれでお終い」と告げたつもりでチェアをデスクへと反転させようとしたけれど、
「ちょっと、待ってよ」
「……アンタなんか別の部署に飛ばされちゃえばいいのに」
「心外だなあー」
ガッチリと華奢な腕に背凭れを掴まれた所為で、あたしの意図はとことん蔑ろにされるに至る訳で。
止め処なく口を衝いて出る溜め息は必然の産物だと思う。
ちらりと視線を移してまだ時間があることを認め、彼女をデスクルームから連れ出すことに。
給湯室にて仁王立ちし、腕を組んだあたしを尚もニヤニヤと苛立ちポイント満載の笑みで迎え入れる彼女。
気が進まないことは百も承知だけれど、兎に角順を追って話すことにした。