Sarcasm
犯罪組織・プルート
深夜の街。辺りは静寂と漆黒に包まれている。

「……はあっ……はあっ……。だ、誰か…!誰か助けてくれ!!殺される!!」

身なりのいい壮年ほどの男性が転がるように、何者かから必死で逃げている。しかし、無情にもその先の道は行き止まりだ。

「……無駄です。どれだけあなたが抗おうと、プルートはあなたを見つけ出し始末する」

暗い青の目をした女性が男性の背後で言う。男性は怯え、体を震わせた。

「……私は、あなたをーーー」

女性は黒く輝く銃を取り出す。

静寂の中に、鈍い銃声が響いた。



「また殺人だってさ…」

「最近物騒よね〜」

新聞は昨晩起きた事件を取り上げている。

被害者はマルコ・グレッグ。四十歳。工場の社長をする傍ら、この街から犯罪を撲滅しようと活動していた。

最近、犯罪を阻止しようとする人々が多く殺害されている。しかし、それがある犯罪組織による犯行だと誰も知らない。

新聞を読み、震え上がっている人々の横を、闇のように黒い髪に暗い青の目をした女性が通り過ぎる。

その目は冷たく、何を考えているのか感情を読み取ることはできない。

石畳みの道に、彼女が履くブーツの足音が冷たく響いた。
< 1 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop