Sarcasm
マーキュリーは、顔を手で覆って泣きながら部屋を出て行った。

サターンにネプチューンは静かに言った。

「……彼女は、拷問を聞くのは初めてでしたから」

「ああ、わかっている」

サターンは顔を真っ青にしながら答えた。



その日の夜、ネプチューンとサターンはマーキュリーを誘い酒場へと向かった。連れ出した方法はかなり強引で、誘拐現場と勘違いされる可能性もあったが…。

「ビールを頼む」

「スコッチをお願い」

「……バーボン」

それぞれ注文をし、酒が出てくるのを待つ。酒場は賑わっていて、皆笑顔だ。恐ろしい犯罪組織がいることなどここにいる誰一人として知らない。

マーキュリーは暗い表情のまま、ずっとうつむいている。ネプチューンの口から、自然と言葉が漏れた。

「…ごめんなさい。あなただけでも部屋から出したらよかった。ショックよね、あんなものを聞かされて…」

同じ仲間が殺された。たとえ、顔や名前を知らなくても、胸の苦しみは取れることはない。サターンやネプチューンは何度も経験している。その度に、心に新たな傷を負うのだ。救えなかった後悔と、プルートに対する憎しみ……それだけが心に残る。

「……助けたかった。でも、怖くて何もできなかった……」

マーキュリーの頰を涙が伝う。
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