その夜は、星が綺麗だった
でも、わかんない


そんなことを言われても



父にも母にも


こんな感じだから






仮面を外せと言われても



ずっと被ったままだから



「外し方がわかんない」






少し困った顔をする男の子





「父にも母にも、誰にでもいつもこんな感じ」



だから


「だから、もうわかんない」




自分が



誰かに操られているように


勝手に口から言葉が出て、笑顔がつくられる




しなやかなお辞儀も見えない糸をひかれて、動かされているよう






「そっかー、それは困ったなあ」


んー、そーだなぁ

とか言いながら悩む男の子


「じゃあ、オレの話していい?キミは聞くだけでいいからさ。んで、気が向いたら、キミのことも聞かせてよ。なんでもいいから、ね?」



「わかった」




自分のことを話し出す男の子




私より5歳年上で学校に行っているらしい

友達のことだったり、家での勉強のことだったり

男の子が「もーたーいへんで大変で」って言う


おかしくて笑ってしまう話だった


私はこの時


少し仮面が外れかけていた

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