恋の神様に受験合格祈願をしたら?
番外編5 親友の幸せの先
【Side:澤村隆一】
生徒会で新メンバー歓迎会を開催した夜。
俺の部屋に大志が来ていた。
名目は勉強。
本当は……。
「あんなに心臓に悪い会、二度と開催すんなよ」
大志が俺のベッドに突っ伏した。
精神的に色々疲れたのだろう大志へ、俺は内心「幸せなヤツめ」と穏やかに笑った。
幼馴染全員が、不器用な初恋をするお前を心配して、気遣って、応援してるってわかってるだろう?
わかっててのその言葉は、贅沢すぎるぞ。
「よかったな。日向さんもフリーで。彼氏いない歴を尋ねられて、『生まれてからずっといません!』と顔を真っ赤にして叫ばれたときにはお前の気持ちが凄くわかったよ。本当に真っすぐで、汚れてなくて、いい子だよな」
あの会を思いだすと、どうしても笑ってしまう。
「お前の本命は仁美ちゃんだろう? ニコちゃんに手出ししたら、容赦しないからな」
大志が顔をあげた。
その真剣で威嚇する表情に、俺は「うん」と頷いた。
「なあ、大志」
「なんだよリューイチ」
「お前の恋がうまくいったらさ」
「ん?」
「仁美に告白するわ」
俺は今日、決意したことを静かに告げた。
リューイチが驚いた顔をして、勢いよく置きあがった。
そして、
「それ、本当かよ? 絶対の絶対、本当だな!」
俺に詰めよってきた。
「なんでお前が俺の恋に真剣になるんだよ」
俺が笑うと、大志が頭を掻いた。
「だってさあ。じれったいというか、小学生のときから見守ってきたんだぞ! いい加減待ちくたびれたというか、なんというか……その……。俺にお前の恋まで背負わせって、ちょっと重くないか?」
ハタッと気づいた大志に、俺は小さく噴きだした。
「今頃気づいたのかよ」
「チクショーッ! 絶対にこの恋を叶えなくちゃなんねえじゃん。受験もあんのに、あんまプレッシャーかけるなよ」
大志が俺の枕を掴んで、俺に投げてきた。
「まあ、いいけどさ」
大志がまたベッドに倒れた。
「お前がその気になったってだけでも進歩だ」
そう言って、大志は黙った。
どれだけ立ったのだろう。
勉強していた俺は、大志が寝てしまったのではないかとベッドを見やった。
大志が横になったまま俺を見つめていた。
「なあ、リューイチ。俺、もし振られても……。仁美ちゃんが言う通り、ニコちゃんは俺にはもったいなさすぎるから、振られる前提でいるんだけどさ。振られても、俺は何度でもニコちゃんに告白するよ」
大志が天井へと顔を向けた。
「ニコちゃんがしぶしぶ俺と付き合ってくれるまで、何度でも告白する気でいるから。だから……」
大志がクスリと笑った。
自分に向けてなのか、俺に向けてなのか、それとも両方になのかわからない笑い方だった。
「お前は将来、仁美ちゃんに告白するしかないんだよ」
大志の宣言が俺の心を震わせた。
静かな感動。
大志、変わったな。
まさか、お前がこんなに頼もしい親友になるとは、小学生のころは思わなかった。
「ああ、するさ」
俺は穏やかな気持ちで答えた。
Fin
俺の部屋に大志が来ていた。
名目は勉強。
本当は……。
「あんなに心臓に悪い会、二度と開催すんなよ」
大志が俺のベッドに突っ伏した。
精神的に色々疲れたのだろう大志へ、俺は内心「幸せなヤツめ」と穏やかに笑った。
幼馴染全員が、不器用な初恋をするお前を心配して、気遣って、応援してるってわかってるだろう?
わかっててのその言葉は、贅沢すぎるぞ。
「よかったな。日向さんもフリーで。彼氏いない歴を尋ねられて、『生まれてからずっといません!』と顔を真っ赤にして叫ばれたときにはお前の気持ちが凄くわかったよ。本当に真っすぐで、汚れてなくて、いい子だよな」
あの会を思いだすと、どうしても笑ってしまう。
「お前の本命は仁美ちゃんだろう? ニコちゃんに手出ししたら、容赦しないからな」
大志が顔をあげた。
その真剣で威嚇する表情に、俺は「うん」と頷いた。
「なあ、大志」
「なんだよリューイチ」
「お前の恋がうまくいったらさ」
「ん?」
「仁美に告白するわ」
俺は今日、決意したことを静かに告げた。
リューイチが驚いた顔をして、勢いよく置きあがった。
そして、
「それ、本当かよ? 絶対の絶対、本当だな!」
俺に詰めよってきた。
「なんでお前が俺の恋に真剣になるんだよ」
俺が笑うと、大志が頭を掻いた。
「だってさあ。じれったいというか、小学生のときから見守ってきたんだぞ! いい加減待ちくたびれたというか、なんというか……その……。俺にお前の恋まで背負わせって、ちょっと重くないか?」
ハタッと気づいた大志に、俺は小さく噴きだした。
「今頃気づいたのかよ」
「チクショーッ! 絶対にこの恋を叶えなくちゃなんねえじゃん。受験もあんのに、あんまプレッシャーかけるなよ」
大志が俺の枕を掴んで、俺に投げてきた。
「まあ、いいけどさ」
大志がまたベッドに倒れた。
「お前がその気になったってだけでも進歩だ」
そう言って、大志は黙った。
どれだけ立ったのだろう。
勉強していた俺は、大志が寝てしまったのではないかとベッドを見やった。
大志が横になったまま俺を見つめていた。
「なあ、リューイチ。俺、もし振られても……。仁美ちゃんが言う通り、ニコちゃんは俺にはもったいなさすぎるから、振られる前提でいるんだけどさ。振られても、俺は何度でもニコちゃんに告白するよ」
大志が天井へと顔を向けた。
「ニコちゃんがしぶしぶ俺と付き合ってくれるまで、何度でも告白する気でいるから。だから……」
大志がクスリと笑った。
自分に向けてなのか、俺に向けてなのか、それとも両方になのかわからない笑い方だった。
「お前は将来、仁美ちゃんに告白するしかないんだよ」
大志の宣言が俺の心を震わせた。
静かな感動。
大志、変わったな。
まさか、お前がこんなに頼もしい親友になるとは、小学生のころは思わなかった。
「ああ、するさ」
俺は穏やかな気持ちで答えた。
Fin