恋の神様に受験合格祈願をしたら?
1章 受験どころじゃありません!

【side:日向にこ】

 高校受験当日。
 私は目覚まし時計よりも早く起きた。
 気持ちいいくらい、スッキリと目覚めた私は、ベッドからおりると、机の真ん中に置いていた受験票を手に取った。
 さんざん確認したはずの自分の名前を、もう一度確認する。
 『日向にこ』
 それが私の名前。
 よしゑおばあちゃんから、一番最初に貰ったプレゼント。
 名前の意味は『ニコニコと笑顔で楽しく暮らせますように』。
 だから、テストと正式な書類以外に名前を書くとき、私は『少しでもたくさんニコニコと笑顔で暮らせるよう』と願掛けして、『にこ』ではなく『ニコ』と書いている。
 でも、今日ばかりはニコニコ出来ないよ。
 私が志望する公立高校の普通科は、受験志望人数が定員数を少し超えている。
 担任の先生は「よほどのことがなければ受かるだろう」と言ってたけど、何度か私立との併願をすすめてきたんだよね。
 それって、落ちる可能性が高いってことでしょう?
 中間や期末の順位は、決まって真ん中より下。
 私立はお金がかかるからって断ったけど、併願するべきだったかな。
「もうダメッ」
 緊張しすぎて、吐き気がしてきた。
 取り柄が何一つない私の最大の欠点は3つ。
 極度のあがり症なこと。
 全然自信が持てないこと。
 何かあるたびに、すぐ後ろ向きになっちゃうこと。
 私は受験票と並べて置いていた恋愛のお守りを握ると、
「おばあちゃん、落ちたらどうしよう」
 心臓をバクバクさせながら、しゃがみ込んだ。
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