恋の神様に受験合格祈願をしたら?
 今、ニコちゃんを見たら、片思いのまま襲ってしまいそうで怖い。
「菅野さん、本当は具合悪いんじゃないですか?」
 ニコちゃんの見当違いな労りに、俺は俯いたまま首を振った。
 今、声をだしたら、ニコちゃんに引かれるほど「好き」を連発してしまう。
「あのっ、みなさんも疲れましたよね。ここで休んでてください。私、ジュース買ってきます」
 早口になったニコちゃんに、俺は顔を隠したまま微笑んだ。
 そんなに気を遣わなくてもいいのに。
 そこがニコちゃんらしいけど。
 心があったかくなる。
 その刹那。
「ちょっとニコ、どこいくの!」
 谷地ちゃんと、
「日向さん、お金は!」
 リューイチと、
「1人で行動しない!」
 見崎ちゃんと、
「ニコちゃん!」
 仁美ちゃんの叫び声が響いた。
 どっどうした?
 思わず覆っていた手を外した俺の目に映ったのは、
「待ってニコ!」
 視界から走って消える寸前の見崎ちゃんと、
「ハルも危ないって」
 それを追う谷地ちゃんだった。
「早い早い、注文取らずに行っちゃった」
 のん気なヒロが遠くを眺めるように右手を構え、2人が消えたドアを見やった。
「出ていったばっかだし、すぐに追いつくだろ。なあ、大志。本命に1人だけ特別に気を遣ってもらった感想はどうよ」
 リューイチが立ったまま俺を見下ろし、含みのある笑みを浮かべた。
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