恋の神様に受験合格祈願をしたら?

【side:日向にこ】

 女子トイレの個室に飛び込んだ。
 慌ててドアを閉めて鍵をかける。
 ほぼ同時に、
「逃げてんじゃねーよ!」
 罵声とともに大きな音と衝撃がドアを襲った。
「出てこいよブス!」
「存在自体が気持ち悪いんだよ」
「優しい菅野くんを色目遣って狂わせて、あんなこと言わせたの全部アンタの仕業でしょ? アンタのせいで、アタシがまわりからどんな目で見られてんのか知ってんの? 今すぐ謝れよ。そこから出て、このタイルに土下座してよ。しろって言ってんのが聞こえないの!」
「ほらっ、アタシたち優しいからさあ。ドア開けなくてもいいから謝りな。謝っても許してやらないけどさあ」
「ヨーコ、ひっどーい」
 ケタケタと笑い声が響く。
「謝るのは自由じゃん」
「ほらっ、なんか言えよ。黙ってちゃわかんねーんだよ」
「ブスのくせに調子づいてんじゃねーよ!」
 激しい怒鳴り声と嘲笑、ドアを叩く衝撃が続く中、私は恐怖のあまり震えあがった。
 心もとないドアの金具が今にも壊れそうで、私は蹴り破られないようにドアへと背中を当てた。
 恐怖で息が浅くなる。
 筋肉が萎縮して、ドアにもたれながらも立っていられなくなって丸まった。
 今頃、全然戻らない私を、ハルちゃんやリカちゃん、生徒会のみなさんたちが心配しているかもしれない。
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